🏠不動産の“今”と“これから”を考える

不動産 不動産

昨今の市場の変化から思うこと

数年前、旅先で「空き家をリノベーションしてゲストハウスにします」という書き込みを見たことがある。
その頃は“地方再生”という言葉がどこか未来の話だった。
しかし、最近ふと「これ、予想より早く現実になってるな」と感じる機会が増えてきた。

先日、ある場で不動産市場に精通した専門家の話を聞いた。
その中で、“金利環境”“空き家の増加”“地域・用途の変化”というキーワードが頻出していた。
わたしは旅や移住を通じて地方の様子を見てきたので、「ああ、この景色は自分が旅で見た町と重なる」と直感した。

この記事では、私自身が実体験をもとに感じた「不動産事情の変化」を、
旅する視点、住む人の視点、投資する視点――それぞれ交えて整理していきます。

◆金利上昇と“買う”選択の再考

かつて「低金利だから買い時」と言われた時期があった。
家やマンションをローンで組むなら、金利が低いうちに、と。
だが話を聞いた中で、「金利上昇時代だからこそ、買うか借りるかをちゃんと考えるべき」という声がとても印象的だった。

私自身、旅先で「移住相談会」などにも顔を出したが、
参加者の大半が「買ったほうが得かな?」という問いを抱えていた。
しかし、金利が上がると月々の返済額も変わる。
場所によっては“買ったあとに手放すこと”も選択肢になりうる時代だ。

さらにもう一つ気づいたのは、「買うだけではなく、保有して活かすための環境」がより重要になっているということ。
たとえば、地方の町で古民家を買っても、交通が不便だったり、需要が減っていたりすると、リノベーションしても人は来ない。
つまり、金利上昇時代は“購入の判断”そのものをより慎重にする必要がある。

◆空き家・マンション“供給”が変わる風景

私は数年前から地方の町を歩いてきたが、最近気づいたのは「空き家が多くなった」ということだけではなく、
“空き家の質”が変わってきたということだ。

たとえば、駅から少し離れたマンションで、管理が行き届かなくなった建物が静かに佇んでいた。
旅先で立ち寄った小さな町では、空き家を解体して更地になっている場所もあった。

聞いたところによると、今後数年で老朽化した分譲マンションの管理組合が機能しなくなるケースが増えるという。
“住み続けられない建物”が増えれば、地域の価値が落ちるかもしれない。
これも“供給の変化”だと感じた。

このような流れを旅の合間に見ると、
「観光需要がある場所」は賃貸・宿泊需要が保たれるが、
「需要のない場所」は空きが増える。
不動産は“立地・インフラ・コミュニティ”を再検討する時期に入っている。

◆“用途のミックス”が鍵になる時代へ

もうひとつ興味深かったのは“用途のミックス”という概念。
宅地、マンション、商業施設、宿泊施設――それぞれが“専用用途”だった時代があった。
だが今、空きが目立つ地域では「何に使うか」を決めることが難しくなってきている。

私が旅した地方の町では、こういう声を聞いた。
「かつての社員寮を民泊にしたが、集客が予想通りいかない」
「高齢化で商店街の物件が空き店舗になっている」
その町では、地元の方が「宿・テレワーク施設・移住者の住宅」のミックス用途を試していた。

不動産の価値は「買ったあとどう活かすか」で左右されると感じる。
この“用途の多様化”を担保できる物件や地域には、可能性がある。

◆住む人・移住者・投資家、それぞれが問われる選択

私は旅先で、移住相談会や町内会の集まりも覗いた。
そこから見える “住む人の視点” は、投資家や事業者とはまた違うものだった。

たとえば移住者が言っていた。
「ここで暮らしたい。でも仕事や交通が心配」
というもの。
住むために買うのか、暮らしを変えるために移るのか。
この問い自体が、今の不動産選びの根底にある。

投資家の視点では、
「利回り」「キャピタルゲイン」「管理のしやすさ」などが当然考慮される。
しかし今はさらに、
「空き家の法制度」「建物の老朽化」「住み続けられる環境かどうか」
という“長期的な視点”が強まっている。

旅先で見た町では、
空き家が増えている地区ほど住む人が減り、商店街が寂しくなっていた。
それは投資にも住むにも“既存のインフラが揺らぎ始めている”というサインと感じた。

◆私自身の“これからの選び方”を整えた瞬間

この話を聞いて、私は自分自身の住まいや物件の選び方を少し変えた。
たとえば、「買うなら職住近接」「交通網が整っている」「用途を変えやすい」など基準を新たにした。

旅での経験が役立ったのは、
“町を歩いてみて感じる空気”を大事にしたこと。
人通り、店舗の様子、夜の町の静けさ、移動のしやすさ――体感できる情報は、ネット情報よりも強い。
私は次に物件を見るなら、少なくとも一泊して、体で町を感じてみようと思いました。

◆考えておきたい3つの視点

それでは、私が聞いた話と旅の実感から、
今後の不動産を考える上で意識したいポイントを3つ挙げます。

  1. 金利+維持費=リスク
     購入額だけでなく、保有し続けるコストを含めて試算する。
     地方物件や築年数の古い物件は、管理費・修繕費・空室リスクを見逃せません。
  2. 用途変更可能性
     もし住まなくなったら?貸すなら?売るなら?
     柔軟に使える物件・エリアは長期的に安心。
  3. 地域の未来を肌で感じる
     住民の姿、交通の本数、商店街の活気、若い人の数。
     旅した時に「この町、雰囲気が良い」と感じたら、住む・投資するヒントになります。

🏚 空き家を扱うときの“リスクとメリット”

――購入・活用・運用を考える前に絶対知っておきたい現実

【リスク編】

❌ 1. 修繕費が高額になりやすい

空き家は長年使われていないほど劣化が進みます。
特に以下の修繕は“ほぼ必須”です:

  • 屋根
  • 外壁
  • 水回り(給湯器・配管)
  • シロアリ
  • 電気・ガスまわり

見た目はキレイでも、床下や天井裏に問題が潜んでいることが多いです。
実際、私が見た空き家でも「外観は良いのに床下が湿気で腐食」という例がありました。

修繕費は数十万〜数百万円。
場合によっては“建て替えレベル”になることも普通です。

❌ 2. 立地によっては“使い道がない”

空き家を活かそうと思っても、

  • 車必須のエリア
  • 商店や医療機関が遠い
  • 若者人口が少ない
  • バスが1〜2時間に1本しか来ない

こういう場所だと、
住むにも貸すにも売るにも難しくなります。

「不動産=立地」という言葉を、
空き家はまさに体現しているジャンルです。

❌ 3. 解体費が高い(しかも年々上がっている)

今は解体費がかなり高騰しています。

  • 木造:100万〜300万円
  • 鉄骨・RC:200万〜500万円以上

さらに廃材の処理費も上がっていて、
“捨てるのにお金が大きくかかる時代”になっています。

空き家を買ったあとに、

「これ、解体したら家の購入額より高くない?」

というパターンも実際にあります。

❌ 4. 固定資産税がかかる(しかも優遇が外れることがある)

空き家は基本的に固定資産税が発生しますが、
「特定空き家」に指定されると建物部分の優遇が外れ、
税額が“最大6倍”に跳ね上がることも。

管理せず放置していると、
税負担が重くのしかかるケースがあります。

❌ 5. 管理が大変(遠方だとなおさら)

空き家の管理は意外と重労働です。

  • 雑草
  • 雨漏りチェック
  • ポストの管理
  • ゴミの放置
  • 隣家との境界トラブル
  • 越境した枝の処理

放置していると近隣からクレームが来たり、
行政指導の対象になるリスクもあります。

❌ 6. 売りにくい

空き家の大半は需要の少ないエリアにあります。
いざ売ろうとしても、

  • 築古で売れない
  • 買い手がつかない
  • 価格を大幅に下げないと動かない

という現実があります。

❌ 7. 法律・制度のアップデートに巻き込まれる

空き家関連の法律は近年どんどん変わっています。

  • 管理義務
  • 特定空き家の指定
  • 解体促進
  • 活用支援制度

制度変更で“負担だけ増える”ケースもあり、
情報収集は必須です。

【メリット編】

ここからは、リスクと紙一重ですが
うまく扱えば大きなメリットになるポイントを紹介します。

⭐ 1. 購入価格が驚くほど安い

空き家の最大の魅力は「価格の安さ」です。

  • 100万円以下
  • 中には0円物件
  • 譲渡型(移住すれば無料で提供)

こうしたケースは珍しくありません。

リノベ前提とはいえ、
“土地付き”でこの価格は普通の不動産ではあり得ません。

⭐ 2. リノベーションの自由度が高い

空き家は基本的に“現状渡し”。
つまり、買った人が自由に使えるのが魅力です。

  • 古民家風リノベ
  • カフェ併設の住まい
  • コワーキング×宿
  • オフィス兼住居
  • アートスペース
  • ワーケーション向け施設

用途が柔軟で“自分の世界観で作れる”のが大きな魅力。

⭐ 3. 持ち家という安心感を安価に得られる

都市部では到底買えない価格で
“家を持つ”という選択肢が現実になります。

  • 子育て
  • 自由な暮らし
  • クリエイティブな生活
  • 畑・庭つきの暮らし
  • 2拠点居住
  • 週末別荘

人生の幅が一気に広がります。

⭐ 4. 収益化のポテンシャルがある

場所によっては、空き家はむしろ“宝”になります。

  • 民泊
  • サウナ小屋
  • コテージ
  • 月額貸しの別荘
  • フィルム撮影ロケ地
  • 写真映えスポット
  • シェアハウス
  • 店舗物件

都市圏からの観光需要が強い地域であれば、
リノベ投資として成立するケースも多いです。

⭐ 5. 地域コミュニティとの交流が生まれる

空き家活用を通じて、

  • 地元の人とのつながり
  • 地域行事
  • 新しい働き方の情報

など、新たな「人のつながり」が得られることも多いです。

これは普通のマンションや賃貸では得にくい価値です。

⭐ 6. 行政支援(補助金)が豊富

自治体によっては、

  • 改修補助
  • 移住補助
  • 子育て支援
  • 家具家電支援
  • 空き家バンク
  • DIY可物件の提供

など、実質的な支援が受けられる地域もあります。

⭐ 7. “町を元気にする側”に回れる

空き家が多い町は、
町の人が「誰か使ってくれたら嬉しい」と思っていることが多いです。

空き家を活かすと…

  • 人が来る
  • 店が増える
  • 子育て世帯が来る
  • 商店街が明るくなる
  • 地域経済が回る

地域の未来に貢献できる
“社会的意義”を強く実感できます。

🏡判断力を培う

空き家には確かに多くのリスクがあります。
特に 修繕費・解体費・管理負担・立地の弱さ
軽視すると大きなトラブルになります。

一方で、
「価格の安さ」「自由度」「地域とのつながり」「収益ポテンシャル」
など、うまく活用すれば大きなメリットにもなります。

重要なのは、

空き家は「安いから」ではなく
「使い道があるかどうか」で判断すること。

そして、
“土地とどう付き合うか”という視点が最重要ポイント。

◆旅も不動産も、共通するのは“場所との対話”

旅と不動産には共通点があると感じます。
旅は“その土地を知る”行為であり、
不動産購入・保有も“その土地と付き合う”行為だから。

その土地の息遣いを感じることで、
価値のある場所と、これから苦しくなる場所が見えてきます。

不動産を語るとき、数字・立地・築年数だけでは語れない“時間”があります。
その町がどれだけ人を迎えてきたか、どれだけ見送ってきたか。
その時間を感じることが、
“今の不動産を賢く選ぶ”鍵になるのだと、旅先で確信しました。

だから私は、これからも旅をしながら町を見て、
町を見ながら不動産を考えていきたいと思います。
そして、
「この場所、好きだな」「ここに人が残ってるな」
と感じたとき、その瞬間を大切にしたい。

場所とは、出会うものでもあり、
守るものでもあり、
じっくり付き合うものでもあります。

旅好きとして各地を眺めてきた私が、
次にどんな場所と出会うのか。
それを想像すると、少しワクワクします。